キノウコヨミ

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早稲田大学 文化構想学部 文芸・ジャーナリズム専攻 卒業。 主に近現代の純文学・現代詩が好きです。好きな作家は、太宰治・岡本かの子・中原中也・吉本ばなな・山田詠美・伊藤比呂美・川上未映子・金原ひとみ・宇佐美りんなど。 読者の方に、何か1つでも驚きや発見を与えられるような記事を提供していきたいと思います。

岡本かの子『母子叙情』ラストシーンの意味とは?

『母子叙情』紹介 『母子叙情』は岡本かの子著の小説で、1937年3月『文学界』に掲載されました。 本作は、著者・岡本かの子の出世作ともいわれている作品です。 主人公・かの女は岡本かの子自身、その家族は岡本家がモデルとなっており、実話に基づいた創作となっています。 パリに留学中の息子への悶えるほどの恋しさ、一郎に後ろ姿の似た青年へ抱いてしまった愛情などをめぐって、主人公の心の揺れ動きが繊細に描写された作品です。 ここでは、『母子叙情』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『母子叙情』あらすじ 一家で渡 ...

岡本かの子『老妓抄』老妓の「悲しみ」とは何か?

『老妓抄』紹介 『老妓抄』は岡本かの子著の短編小説で、1938年『中央公論』11月号に掲載されました。 本作は、発明家を志す青年・柚木との奇妙な関係性を通じて、老妓の悲しみと魂の美しさを描きだした作品です。 作品の最後に添えられた「年々にわが悲しみは深くして/いよよ華やぐいのちなりけり」という短歌が有名で、この和歌それ自体も著者の代表作として名高いものとなっています。 ここでは、『老妓抄』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『老妓抄』あらすじ 憂鬱をたたえつつも快活さにあふれた老妓・小そのは、長年 ...

岡本かの子『鮨』本作で描かれた愛情とは?

『鮨』紹介 『鮨』は岡本かの子著の短編小説で、1939年1月、『文芸』に掲載されました。 本作は、著者の死の前月に発表された最晩年の作品であり、彼女の代表作の一つにもなっています。 極度の潔癖から生きづらさを抱えた少年が母の愛によって救われるさまを、丁寧な情景描写と流れるような筆致で描いた作品です。 ここでは、『鮨』のあらすじ·解説·感想までをまとめました。 『鮨』あらすじ 福ずしの看板娘·ともよは、五十過ぎぐらいの常連客·湊に好意を寄せています。 ある日、ともよは表通りで偶然湊を見かけ、声をかけました。 ...

太宰治『走れメロス』メロスの人物像からディオニスの改心の意味まで!

『走れメロス』紹介 『走れメロス』は太宰治著の短編小説で、1940年『新潮』5月号に掲載されました。 本作は国語の教科書に採用されていることから、太宰の著書の中でもっとも知名度の高い作品のひとつといえます。 人質となった友人の信頼に報いるため、命がけで処刑場への帰還をめざす実直で勇敢な男、メロスの姿を描いた、著者の作品群では異色ともいうべき爽やかさを感じさせる作品です。 ここでは、『走れメロス』のあらすじ·解説·感想までをまとめました。 『走れメロス』あらすじ メロスは、妹の結婚式の買い出しに訪れたシクラ ...

太宰治『新ハムレット』ラストシーンの台詞の真意とは?

『新ハムレット』紹介 『新ハムレット』は太宰治著の小説で、1941年、著者にとって初の書き下ろし長編小説として文藝春秋社より刊行されました。 本作は題名の通り、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』を原案として創作された戯曲風のパロディ小説です。 「はしがき」の中で著者自ら、本作は「註釈書でもなし、または、新解釈の書でも決してない」「作者の勝手な、創造の遊戯に過ぎない」と言及しており、実際に物語の展開については原作とかけ離れた部分が多々見られます。 ここでは、『新ハムレット』のあらすじ·解説·感想までをまとめ ...

太宰治『乞食学生』数々の詩や戯曲からの引用の意味とは?

『乞食学生』紹介 『乞食学生』は太宰治著の小説で、1940年7月号~12月号にかけて雑誌『若草』に連載されました。 本作は、職業作家としての苦悩を抱えた男が二人の学生との出会いを通じて、過ぎ去った青春の気分を取り戻す物語です。 主人公は、太宰というペンネームであるほか著者自身との類似点が多いものの、本名は創作されていたり、いわゆる夢オチの結末であったり、フィクションとしての要素も多く見られます。 ここでは、『乞食学生』のあらすじ·解説·感想までをまとめました。 『乞食学生』あらすじ 気力もなく土手を歩いて ...

太宰治『清貧譚』原作『聊齋志異』との違いを詳しく紹介!

『清貧譚』紹介 『清貧譚』は太宰治著の短編小説で、1941年1月号の雑誌『新潮』に掲載されました。 本作は、中国·清の時代の怪異短編集『聊齋志異』の中の「黄英」という作品を翻案したものです。 原作から大筋は改変されていないものの、細部の描写には太宰なりの工夫が多く見られます。 ここでは、『清貧譚』のあらすじ·解説·感想までをまとめました。 『清貧譚』あらすじ 菊を愛し、清貧を重んじる馬山才之助は、旅の帰路、菊に詳しい少年·陶本三郎とその姉·黄英に出逢い、二人を家に招きます。 三郎は枯れかけた菊をも蘇らせる ...

太宰治『畜犬談』ラストシーンで私が橋をこえた理由とは?

『畜犬談』紹介 『畜犬談』は太宰治著の短編小説で、1939年10月号の雑誌『文学者』に掲載されました。 副題には「―伊馬鵜平君に与える。」とあり、太宰の無二の親友であった作家・伊馬春部氏に送られています。 これは作中に登場する、猛犬に噛み付かれた「友人」が伊馬氏をモデルとしているからと思われます。 犬を猛獣といって恐怖し、その卑しさを毛嫌いしているにも関わらず、たまたま家まで着いてきてしまった犬を養うこととなってしまった「私」の日常を描いた作品です。 ここでは、『畜犬談』のあらすじ・解説・感想までをまとめ ...

太宰治『富嶽百景』草木のモチーフから紐解く太宰の心情!

『富嶽百景』紹介 『富嶽百景』は太宰治著の短編小説で、1939年2月号〜3月号にかけて雑誌『文体』に掲載されました。 太宰自身の実体験に基づいて描かれており、随筆、あるいは私小説としても読める作品です。 長編執筆のため、富士観望の名所としても知られる御坂峠に逗留して過ごした約3ヶ月間の様子が、あらゆる富士の姿とともに描かれています。 ここでは、『富嶽百景』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『富嶽百景』あらすじ 私生活の乱れていた「私」は心機一転すべく、師・井伏鱒二の逗留する御坂峠の天下茶屋に身を ...

太宰治『グッド・バイ』太宰が真に描きたかったものとは?

『グッド・バイ』紹介 『グッド・バイ』は太宰治著の小説で、未完のまま絶筆となった作品です。 太宰の死から8日後、1948年6月21日の『朝日新聞』に第1回が掲載され、翌月の『朝日評論』にて第13回までの原稿と、作者の言葉がまとめて掲載されました。 主人公・田島が、かつぎ屋・キヌ子に振り回されつつ、十人ほどの愛人一人ひとりに別れを告げてまわる様子をコメディ調で描いた作品です。 ここでは、『グッド・バイ』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『グッド・バイ』あらすじ 田島周二は、終戦後、妻子と離れて単身 ...