まつもとあゆむ

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千葉大学文学部文学科文学理論専攻。自分も含めた読者が本を通して導かれる小宇宙、その無限の世界で様々な読み方に出会えることをいつも期待しています。あまり固定ジャンルに囚われないように本を読んでいますが、個人的な好みは「ビターエンド」の作品です。本も大事ですが、本から得た刺激を実社会に生かしてこそ、本の価値が生まれると信じているので、皆さんにそれが伝えられることも意識しています。本来、書評というのは誰でもできるのですが、「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく(以下略)…」といくのは大変で、その修行として、まだ道四分の一ですが執筆中です。

ウィリアム・フォークナー『野性の棕櫚』対位法が織りなすフォークナーの二重小説

『野性の棕櫚』の紹介 『野性の棕櫚』は、1939年、ランダム・ハウス社から出版されました。 作者のウィリアム・フォークナーは、ミシシッピ州のニューオールズバニーで生まれた、アメリカを代表するノーベル賞作家です。 本作は、フォークナーの代表作の一つとされていますが、2つの物語が交互に展開するという「二重小説」という構成をとっています。 ここでは、『野性の棕櫚』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『野性の棕櫚』――あらすじ ヘンリー(ハリー)は医学大学を卒業後、インターンをしていましたが、人妻シャーロ ...

ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』3つの翻訳を比較し本作のテーマに迫る!

『闇の奥』の紹介 『闇の奥』は、1899年、『ブラックウッズ・マガジン』に発表、1902年、短編集『青春』に収録され単行本として刊行されました。 作者のジョゼフ・コンラッドは、ウクライナで生まれたポーランド人で船乗りでしたが、イギリス国籍を取得、イギリス作家として執筆活動をしました。 本作はコンラッドの自伝的作品とも言われますが、日本では夏目漱石を初め、世界の作家に多大なる影響を与えた物語です。 ここでは、『闇の奥』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『闇の奥』――あらすじ アフリカ大陸の中央部へ ...

小林多喜二『一九二八年三月十五日』どこまでが現実?作品のリアリティを探る

『一九二八年三月十五日』の紹介 『一九二八年三月十五日』は、1928(昭和3)年、全日本無産者芸術連盟(ナップ)の機関誌『戦旗』10・11月号に発表された小林多喜二の作品です。 本作は、1928年3月15日未明に政府から日本共産党の活動家を中心に一斉検挙された事件をモチーフにしており、プロレタリア文学の画期的な作品として世に受け入れられました。 しかし、発表当時、検閲の目もあり、多くの削除と伏せ字によって修正されたものでした。 1948(昭和23)年日本評論社で刊行された『小林多喜二全集』の収録掲載をもっ ...

井上ひさし『吉里吉里人』本作品が追求した社会病理から現代からみた解釈まで

『吉里吉里人』の紹介 『吉里吉里人』は、1978(昭和53)年5月から1980(昭和55)年9月までに『小説新潮』に発表され、1981(昭和56)年に新潮社で出版された作品です。 本作は、先に雑誌『終末から』(筑摩書房)で1973(昭和48)年5月に連載を開始していましたが、同書の終刊(1974(昭和49)年10月)により未完となっていました。 また、この作品のもととなるラジオドラマ「吉里吉里独立す」が1964(昭和39)年に執筆されています。 1981(昭和56)年に第2回日本SF大賞、1982(昭和5 ...

小林多喜二『蟹工船』解説!プロレタリア文学の現代的意義を考える

『蟹工船』の紹介 『蟹工船』は、1929(昭和4)年、全日本無産者芸術連盟(ナップ)の機関誌『戦旗』5・6月号に発表された小林多喜二の代表作です。 本作は、当時、プロレタリア文学界、労働活動家のみならず、「1929年度上半期の最大傑作」(読売新聞)と一般の文壇からも高い評価を得ました。 また、2008(平成20)年に起きた『蟹工船』ブームにより、再評価された作品です。 ここでは、『蟹工船』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『蟹工船』――あらすじ オホーツク海で蟹を捕獲し、缶詰を製造する「蟹工船」 ...

井上ひさし『手鎖心中』あらすじ!戯作者とはどうあるべきか?

『手鎖心中』の紹介 『手鎖心中』は、1972(昭和47)年3月刊行『別冊文藝春秋』119特別号に発表された井上ひさしの小説です。 同年7月に第67回直木賞(上半期)を受賞しています。 既に劇作家として認められていた井上ひさしの3作目の小説で、井上笑劇のエッセンスがつまった初期の作品となります。 ここでは、『手鎖心中』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『手鎖心中』――あらすじ 大坂(大阪)から江戸へ戯作者になるべくやってきた与七(後の十返舎一九)。 彼は居候先の版元(出版社)蔦屋重三郎の紹介で、元 ...