落語『饅頭こわい』あらすじ&サゲの解説!お茶が怖いの意味とは?

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落語『饅頭こわい』あらすじ&サゲの解説!お茶が怖いの意味とは?

『饅頭こわい』の紹介

『饅頭こわい』は古典落語の演目の一つ。

原話は1768年に中国で出版された笑話集『笑府』の訳本からと思われるそうですが、中国における似た話がたくさんみつかっているそうです。

2005年にTBS系で放送されたテレビドラマでも取り上げられた演目でもあり、広く知られています。

主に多くの若手が修練のために行う「前座話」のひとつとされるが、5代目の柳家小さん、三代目桂三木助が得意のネタとして長く演じていたそうです。

「饅頭こわい」の時間は30分から1時間くらいと、噺家の構成によって異なりますが、噺家に入門してから初期のうちににならう演目とされています。

ここでは、『饅頭こわい』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。

『饅頭こわい』ーあらすじ

暇を持て余した若い男たちが集まり、それぞれ嫌いなものを言い合います。

 

「へび」「クモ」「アリ」「馬」などそれぞれが怖いと思うもの。嫌いなものを言い合います。

言い合う中にたばこをふかし、話に入ってこない男がいる

「若い者がくだらないものを怖がるなんて情けない。世の中に怖いものなどない!」

とうそぶく人間がいる。くまさんだ。

くまさんは「へびは開いて蒲焼にして食ってもよい、はちまきにしてもいい。自分から締め付けてくれるからはちまきを締める必要がない」

「くもは納豆にいれて糸ひいたものと一緒にして食べてやる」

「アリは赤飯の中に一緒に炊き込んで食べてやる」

「馬は足がついている、怖くなんかない足があるものは全部食べてやる」

と勢いよく断言する。すると一人の男が

「こたつも四つ足だけど、食えるのかい?」と聞くと、

「あたるものは食わない主義だ」(コタツにあたる)

くまさんに「本当に怖いものはないのか」と詰め寄ると、くまさんはしぶしぶ「ある」と白状する。

くまさんになにが嫌いなのかきうくとくまさんは消えてしまいそうな小さな声で「まんじゅう」という。

くまさんは「まんじゅうがこわいんだ。まんじゅうの話をするだけで気分が悪くなる。寒気がする」と言い出し、奥の部屋へ布団を敷いて休むことにした。

残った男たちはくまさんが虚勢をはっていたのをいいことに、くまさんの枕元にたくさんのまんじゅうを並べて困らせてやろうと考えました。

「饅頭のこと考えるだけでも寒気がするっていうんだ、枕元にたくさんおいてあったら、本当に死んでしまうかもしれないよ」

「それじゃあ本当の 餡(暗)殺になっちまうよ」

男たちはお金を出し合い、まんじゅうを買いました。

「お前さんはそばまんじゅう、お前さんはくりまんじゅう、お前さんは葬式饅頭か、気が早いな」

くまさんの枕元に饅頭を並べます。

並べ終わって隣の部屋からくまさんに声を掛けます。

「おおいくま!くまもそろそろ起きて話に混ざらねえか?」

くまさんは「おう、なんだか、まだ気分がよくない、目の前に饅頭がたくさんあるように見えるんだが、。ぎえー!饅頭だこわいこわいこわい、そばまんじゅう、こわいこわいこんなこわいものは食べてしまおうおうこわいこわい、くりまんじゅう、こわいこわいおおくりまんじゅう」

目覚めたくまさんは、声を上げ、ひどくうろたえてみせながらも「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」「うまいうまいうますぎて怖い」などといって男たちが買ったまんじゅうを全部食べてしまいます。

くまの様子を見ている男たちは「おい、くまのやろう俺たちが用意した饅頭全部食ってるぞ!これは一杯くわされたんじゃねえか!」

と、くまさんに詰め寄ります。

「やい!くま!お前が本当に怖いものはなんだ!」

ときくと、

くまさんは「このへんで、濃いお茶がいっぱい怖い」。

『饅頭こわい』ー概要

主人公 くまさん
重要人物 町のおとこたち
主な舞台 昼から夕方にかけての時間帯、町の人の家の中
時代背景 江戸時代
出典 「笑府」の日本語訳本

『饅頭こわい』―解説(考察)

苦手なものを打ち明ける

この時代の男たちが集まって遊びに行く、となると、お金を持っている者は遊郭に行って女遊び、またある者はお酒を用意して魚屋でいい魚を買って飲むという遊びをしていたそうです。

遊ぶにはお金がない人たちはこうして一つの家に集まって過ごしていました。

だれにでも苦手なもの、怖いものはあります。

苦手なものを打ち明けるのは少し恥ずかしいものです。

くまさんは話の輪の中に入らず、煙草をふかしていました。

みんなが苦手なものを打ち明けていくと、くまさんがそれぞれの苦手なものを威勢よく「若い者が情けない、人間は霊長類の最たるものだ、(ありやへび)など食ってやる」と反論したので、みんなのちょっとした反感を買うことになってしまいました。

「こたつは四つ脚だけども食えるのかい?」と言った町の男の返答に、

くまさんは「あたるものはくわねえ」と返します。

炬燵は、足を入れてあたたまる家具です。

昔は囲炉裏に服をかぶせたことから発展しました。コタツを使って暖をとることを、「こたつにあたる」と表現するので、くまさんは「当たるものは食わねえ」と言ったんですね。

当たるもの=食あたりをおこす生ものなどとかけて、うまいこと返しています。

まんじゅうが怖いというくまさんにいたずらを仕掛ける

まんじゅうのことを考えるだけでも寒気がしてきて、具合が悪くなってしまったくまさん。

男たちはいたずら心で饅頭をたくさん買ってきて、枕元に並べて、起きたくまさんを困らせようとします。

町の男たちそれぞれがさまざまなまんじゅうを買いあさってきます。

そば饅頭を買ってくるもの、栗饅頭を買ってくるもの、葬式饅頭を買ってくるもの。

たくらみ話をしているときに、「苦手なものを想像しただけで布団に入ってガタガタと震えてしまうのだから、本物をたくさんおいてあったら、本当に死んでしまうかもしれない。これが本当の暗殺だ」

※まんじゅうの中にはあんこが入っています。この餡と暗殺の”あん”をかけています。

と冗談まじりにみんなで、話をします。

それを踏まえて本当に葬式饅頭を準備してくるものがいます。

葬式饅頭は葬式の返礼品として参列者に持って帰ってもらうものです。

くまさんの死因は饅頭に囲まれたことによるショック死だとして、そしてその葬式が終わった後参列者に葬式饅頭を配ることになります。

葬式饅頭を持ってきた者は、くまさんが亡くなってしまうことを想定して葬式饅頭を葬式前にもってきたので、仲間からは「気が早いね」と言われます。

くまさんがまんじゅうをこわいこわいと言いながら食べる

町の人の声に気づき、うろたえて見せながらも、むしゃむしゃとこわいはずのまんじゅうを食べていきます。

噺家の人たちのこの饅頭を食べる様子も大変面白いです。「くりまんじゅう、怖いひいい!」といいながら本当に食べているかのように見えます。

こわいこわいといいながら、まんじゅうを次々と食べていきますが、町の男たちは隣の部屋にいるだけで、くまさんがまんじゅうと対面する場面を見ていません。

見ていないからこそ、くまさんはこわいこわいと大きな声を出しながらもぐもぐと饅頭を食べるのです。

ここで同じ部屋で様子を見ていられたら、もっと早くくまさんが饅頭を食べていることに気づけたのかもしれません。

本当にこわいものはなんだ

くまさんは町の男に本当にこわいものはなんだと聞かれます。

くまさんは、「この辺で熱いお茶がいっぱいこわい」

と言い、幕が下がります。

くまさんが苦手といった饅頭を、男たちは用意してくれました。

次は熱いお茶がこわいと言えば、お茶が出てくるのではないかと含み、お茶がこわいと言います。

甘い饅頭をたくさん食べたから、熱いお茶ですっきりしたいのです。面白いですね。苦手なものがころころ変わります。

お茶まで出したかどうかは明らかではありませんが、ここで話が終了します。

『饅頭こわい』ー感想

「こわいもの」を食べてしまうという考え方

くまさんは、他人が苦手とするものは、食べてしまえばこわくない、と言っています。

命をもってそのいきものが動いていると、こわいと感じますが、その生物を食べるための処理であれば、怖いなど言う暇はありません。

馬が怖いという町の者が出てきますが、くまさんが言う通り、馬刺しにしてしまえば、おいしく食べることができます。

(この時代に馬刺しがあったのかはわかりませんが。)

食べてしまえば原形もありませんし、実際に動いているところを見なくて済みます。

噺家の演じ分けも必見です。

以上「饅頭こわい」のあらすじと解説でした。

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tororosoba

大学生時代、マンガ好きが高じて出版社にて編集学生アルバイトを経験。紙からデジタルになっていくのが少しさみしい。広く浅く読み漁ります。衝撃は乙一の作品。お気に入りは奥田英朗。空中ブランコシリーズの伊良部医師がツボです。図書館にいると落ち着きます。読書は雑食です。北方謙三の水滸伝はいつ読んでも胸が熱くなります。まだ全巻読んでいません。