書店員が紹介!本屋大賞ノミネート10作!
こんにちは!日本の小説ファンが気になるお祭り『本屋大賞』のノミネート作が発表されました。
今回は全ノミネート作を読了したわたしが、10作品のオススメポイントを紹介していきます!
本屋大賞実行委員がホームページで発表した通り、タイトルのあいうえお順にご紹介します。
『川のほとりに立つ者は』寺地はるなさん著
ジャンル | 恋愛、日常ミステリー |
出版社 | 双葉社 |
出版日 | 2022年10月20日 |
ページ数 | 224ページ |
カフェで店長職を奮闘中の主人公。
彼女はある日突然、恋人が大怪我をし意識不明の重体であるという連絡を受けます。
病院へ慌てて駆けつける彼女。
そこで怪我の原因は喧嘩騒動であったと知らされます。
主人公の知っている恋人はとても穏やかで暴力沙汰とは無縁な人柄でした。
自分の恋人はカッとなると乱暴をしてしまうような人だったのかもしれないとショックを受けます。
自分は相手の何を見ていたのか…と焦りつつ、主人公は恋人の部屋で隠されたあるノートを見つけます。
日記のようなそのノートに頻繁に登場する女性の名前が気になって仕方なくなってしまいました。
ストーリーの主筋のは主人公目線。
そこに作中作のように展開するのは恋人目線の回想です。
ノートを読んでいく主人公の彼女は、読書の好きな女性でした。
だいすきな小説を読むように、大切な人を読んだ経験があなたにはありますか?
恋人たちの未来はいかに。
『君のクイズ』小川哲さん著
ジャンル | 日常ミステリー、クイズ、雑学 |
出版社 | 朝日新聞出版 |
出版日 | 2022年10月7日 |
ページ数 | 192ページ |
主人公がテレビのクイズ番組『Q-1グランプリ』の決勝戦に敗北する場面に始まる小説です。
相手のプレイヤーは最終問題でゼロ文字押しをします。
出題者が1文字も問題文を読み上げていない状態で、なぜ正解をすることができたのか。
そして、やらせなどマイナスな騒ぎをおそらく避けられないことを想定しているにも関わらず、なぜわざわざゼロ文字押しをしたのか。
最終問題の答えは「ママクリーニング小野寺よ」。
それはとてもローカルで地元の人しか知らないようなクリーニング屋さんの名前でした。
主人公は熱烈な思いを競技クイズにかけています。
不正を許しません。
視聴者を騙すことなどあってはならないと思っています。
そんな主人公の正義感をエネルギーにして展開していくものがたり。
ゼロ文字押しの謎を解きながら、『Q-1グランプリ』決勝戦を1問ずつ回想していきます。
『宙ごはん』町田そのこさん著
ジャンル | グルメ小説、料理、成長物語 |
出版社 | 小学館 |
出版日 | 2022年5月27日 |
ページ数 | 369ページ |
主人公の女の子には、お母さんとママがいます。
産んでくれた女性「お母さん」と、育ててくれている女性「ママ」。
ごく幼い頃に、周りのお家はお母さんがひとりだと気がついた主人公。
ふたりの女性を見ながら過ごし、幅広い女性の生き方を見ることになります。
専業主婦の女性。
手に職つけた女性。
お化粧が好きな女性。
自分は料理が好きだと気がついた時、主人公のそばには料理上手で親切な大人がいました。
少しずつ成長しながら料理のレパートリーをものにしていく主人公。
母に寄り添いたいと決意した姿。
どんどん立派に成長していく姿。
そしてふたりのお母さんの関係を知った時の主人公の行動。
主人公はたくさんの人と出会い、別れを繰り返していきます。
その半生をまるで大河小説のように追っていく小説です。
『月の立つ林で』青山美智子さん著
ジャンル | 連作短編集、ハートウォーミング |
出版社 | ポプラ社 |
出版日 | 2022年11月7日 |
ページ数 | 263ページ |
タケトリ・オキナという男性の配信するポッドキャスト『ツキない話』。
『ツキない話』は月にまつわる豆知識や、ほっこりするエピソードを配信する番組です。
毎日、尽きることなくトークを届けるポッドキャスト。
タケトリ・オキナなる人物の配信は、日々多くの人を和ませていました。
『ツキない話』の周りで繋がった人々の物語。
視聴者たちは老若男女、つまずきながら毎日を過ごしています。
そして、無意識のうちに誰かを助けてもいたのでした。
日常の中で、常に誰かと関わっているということ。
常に誰かに助けられていて、誰かを助けてもいるということ。
忘れがちではないでしょうか。
勇気を出してください。
あなたも知らない間に、誰かを幸せにしています。
そんな温かなメッセージが心に流れ込んでくるようです。
『汝、星のごとく』凪良ゆうさん著
ジャンル | 恋愛小説、成長物語、家族小説 |
出版社 | 講談社 |
出版日 | 2022年8月4日 |
ページ数 | 352ページ |
今治という小さな島の中で惹かれあった幼い男女。
困った大人に振り回され、一風変わった大人に助けられながら毎日を過ごしています。
学生時代を共に過ごしたふたり。
まるで世界には自分たち以外存在していないかのよう。お互いしか見えていない毎日でした。
唯一無二の相手同士に見えた恋人たち。
そんなふたりは一度遠距離を経験して、次第にすれ違い始めていきます。
正しく生きることよりも、思いのままに生きていくことを決断した登場人物たち。
人生は思っていたよりも短いようでした。
作中には多くの人物の決意のセリフが登場します。
1つひとつのセリフは波乱万丈の人生を内包しています。
誰に胸を張って生きるのかという問いで、読者を貫く。
それが『汝、星のごとく』という小説だと思います。
『方舟』夕木春央さん著
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 講談社 |
出版日 | 2022年9月8日 |
ページ数 | 304ページ |
古びた地下建築に閉じ込められてしまった主人公。
周囲には他にも悲惨な地下に閉じ込められてしまった人が居合わせたようでした。
その数、9名。
不安な朝を迎えた主人公たち。
そこに今度は地震が起こります。
水漏れのようになり、古い地下建築の中には水が溜まり始めます。
このままでは水に溺れて死んでしまうかもしれない。
おおよそのタイムリミットを割り出した登場人物たち。
その地下建築の構造を紐解いていくと、誰か1人の犠牲があればほか全員の脱出が可能だと判明しました。
では犠牲になってもいいのは一体誰なのでしょうか。
そんな時、閉鎖空間内で殺人事件までもが勃発します。
溺死と殺人。
2つの死の恐怖に晒された者たちの心理戦ものがたりです。
『#真相をお話しします』結城真一郎さん著
ジャンル | 日常ミステリー、短編集、多重解決ミステリー |
出版社 | 新潮社 |
出版日 | 2022年6月30日 |
ページ数 | 203ページ |
日常生活にぴたりとくっつき過ぎているミステリー短編です。
平和なはずの毎日を信じられなくなってしまうほどの驚き。
きっと読者は戦慄すること間違いありません。
資料を持ってやってきた家庭教師の先生。
出会い系サイトで知り合った相手と飲むお酒。
己の毎日を元気に発信しているYou Tuber。
ある時突然、何者かに日常を侵食される恐怖。
幾重にも重なっている「真相」。
そして、自分の日常生活そっくりの舞台背景で起こる恐ろしい出来事たち。
恐怖と驚きにより読者は完全に虜にされてしまう。
1冊を通してそんな仕掛けが満載です。
そして従来のミステリー小説をひっくり返すような、驚き要素の大きい新感覚ミステリー短編集です。
『爆弾』呉勝浩さん著
ジャンル | 日常ミステリー |
出版社 | 講談社 |
出版日 | 2022年4月20日 |
ページ数 | 416ページ |
これといった掴みどころのない、ふざけた酔っ払い男を取り調べする野方署。
忙しい警察関係者は「友達がほしい」と話す酔っ払いを持て余しています。
人智を超えた力を持っていると主張する酔っ払い。
ある一言の予言きっかけに、酔っ払い男は爆弾テロの容疑者に成り代わります。
そのテロは、東京都民を人質にとった非常に悪質なものでした。
ほんとうにこの男が犯人なのか。
ピリピリとした空気の中で容疑者の「予言」を聞き逃すまいと必死になるのは読者も同じ思いです。
小説ならではのエンタメ性を存分に活かしたミステリーです。
「ことば」に着目したミステリー小説。
聞き逃したら都民が殺されてしまいます。
読者を巻き込んだ参加型ことば遊び。正義は守れるのでしょうか。
『光のとこにいてね』一穂ミチさん著
ジャンル | 家族小説 |
出版社 | 文藝春秋 |
出版日 | 2022年11月7日 |
ページ数 | 462ページ |
母親にある水曜日、突然連れて来られた辺鄙な団地。
主人公の少女はそこで、同い年の女の子に出会います。
ふたりの小学2年生の女の子。
あまりの生活の違いに戸惑う様子を見せながらも、子どもらしいのどかな遊びでこころを通わせていきます。
「お母さんと切り離された自分」が想像できない世代の子どもたち。
お母さんの言いつけは絶対でした。
思うままの約束も、生活も許されないその苦しさをよく理解している同い年の友人。
ふたりの女の子はまるで鏡の中の自分を見ているように惹かれいっていきます。
そして共感能力はどんどん膨れ上がりました。
相手の涙も微笑みも、そっくり自分と糸で繋がるようになるのでした。
『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒さん著
ジャンル | 音楽小説、ミステリー小説 |
出版社 | 集英社 |
出版日 | 2022年5月2日 |
ページ数 | 312ページ |
悪夢に長年苦しめられている主人公。
そのきっかけは少年時代。チェロの教室に通っていた当時の事件が原因でした。
そんな主人公が潜入捜査をすることになった先はなんと、音楽教室でした。
音楽家にとって命ほども大切な著作権や演奏権。
その権利が侵害されている証拠をつかむこと。それが主人公に与えられた仕事です。
音楽を奏でる癒しの力。
音楽を奏でることへの歓び。
音楽が主人公を和ませ、心を溶かしていきます。
決着の時、法廷は目前に迫ってきました。
「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」として発表される本屋大賞。
気になる大賞の発表は2023年4月12日(水)です。
全国の書店員の投票で選ばれたノミネート10作。
あなたの気になる小説もきっと見つかります。
ぜひチェックしてみていただけたら嬉しいです!