落語『動物園』あらすじ&見どころを解説!英語版「Zoo Performer」のあらすじも

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落語『動物園』あらすじ&見どころを解説!英語版「Zoo Performer」のあらすじも

『動物園』の紹介

『動物園』は上方落語家の2代目桂文之助(安政5年〜昭和5年)が作った噺です。

古典落語に分類されますが、文之助の活躍時期から考えると、噺の完成は明治から大正時代でしょう。

現在でも桂米朝一門の桂雀々や桂南天がよく演じていますし、上方だけでなく江戸でも演じられています。

動物園がテーマで、わかりやすい内容の落語ですので、学校寄席など子供向けのイベントで演じられることも多い演目の一つですね。

噺の元となったのは、英語圏の有名な小噺「Zoo Performer」だと言われています。仕事のないパントマイムの男が動物園からゴリラになってほしいと頼まれる、という小噺。そのせいか噺に日本のローカル色が少なく、外国の方にもわかりやすい演目として英語、フランス語、イタリア語でも演じられています。

ここでは、『動物園』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。

『動物園』ーあらすじ

仕事が長続きしない28歳の男。「28歳にもなって・・・」叔父さんに小言を言われますが、

「仕事が続かんのは、世の中にわたいに向いた仕事がおまへんねん。わたい、こんなひょろひょろでっから力仕事はあかん、頭もようないから知恵のいる仕事もあきまへんやろ。口下手やから人と接するのも苦手でんねん。」

「朝も弱いでっから朝早いのもあかん、10時くらいから仕事始めて美味しいお昼ごはん食べさせてもうて、いつでもごろごろ昼寝できて。夜遅いのもしんどなりますから4時には帰れる仕事やったら、わたいも頑張りまっせ。もちろん、そんだけしか働きまへんから、お給料たくさんくれとは言いまへん。1日3万円ももらえたら十分ですわ。」

この男の言葉に叔父さんは呆れますが、男にぴったりの仕事を思い出します。

朝10時から仕事ができて、お昼ごはんもついていてゴロゴロしたい時はできて、4時には帰れる仕事。

それは動物園の「トラ」になる仕事。人気のトラが死んでしまい困った動物園の園長が、トラの毛皮を被ってトラになってくれる人を探していたのです。

「トラになるなんて恥ずかしい」と気乗りしない男に紹介状を持たせて、叔父さんは園長の池田さんを訪ねるように言いつけて送り出します。

動物園についた男は園長にトラの毛皮の着方を教えてもらい、檻の中にいれられます。

トラの毛皮を着て「どっこいしょ」と椅子に座った男に、


「椅子に座るトラなんておりまっかいな。トラやったらトラらしゅう檻の中歩きまわってや。」


と、トラらしい歩き方を教えてくれた園長。

「園長、トラの歩き方うまいでんなあ。あんたがトラやればいいのに。」

「トラはあんたやろ。お給料出すんやからしっかりやってや。」


園長は檻から出ていきました。

トラらしいあるき方を檻の中で練習していた男はお腹が空いてきました。

そんな男を、親子連れが見ています。


「お母ちゃん、トラや!強そうやなあ。」と言いながら子供はパンをむしゃむしゃ。

「ええなあ、パン欲しいなあ・・・。ちょっと言うてみたろ。ガオーガオー、パ、パンちょうだいガオー。」

「お母ちゃん!あのトラ、パンちょうだい言うてる!ちょっとあげてみたろ。ほれ。あ!お母ちゃん!あのトラ、手使ってパン食べてる!おかしなトラやなあ。」

不思議そうに親子は立ち去っていき、男はお腹も膨れたしちょっと昼寝・・・と思った矢先に、園内にアナウンスが流れます。

「今から動物園名物、トラとライオンの決闘が行われます!皆さん、トラの檻の前にお集まりください!。」

男は焦ります、ライオンと戦うなんて聞いていません。必死で園長を探しますが見当たりません。

そうこうするうちにライオンの檻とトラの檻を隔てていた扉が開かれ、ライオンが男に近づいてきます。

「もうあかん!園長助けて!」


と叫ぶ男に、ライオンがそっと囁きます。


「静かにせんかい。大丈夫、わしも人間や。」

『動物園』ー概要

主人公 仕事が長続きしない男
重要人物 園長
主な舞台 動物園(移動動物園とも)
出典 英語圏の小噺

『動物園』解説ー見どころ・サゲ

トラの歩き方

男は園長からトラらしい歩き方を教えてもらいます。

檻の中のトラらしい歩き方、皆さんご存知でしょうか。

すたすたきょろきょろ歩くのではなく、獲物を見定めるようにじっと一点を見つめながら、ゆったりぐるぐると同じ場所を歩くのです。

高座では座布団に座った落語家さんが手を丸めて床に付き、手でボックスを踏むように「右手・左手・右手・左手・・・」と動かしながら上半身を前方に突き出し、お客を睨みつけながらトラらしい歩き方を演じます。

上手な落語家さんが演じると、本当にトラに見えてくるんですよね。

この歩き方は教えてもらったからできるものではないので、実際に動物園にトラを見に行って勉強する方もいらっしゃいます。

余談ですが、桂雀々さんや桂南天さんが所属する米朝一門の寄席「動楽亭」は、日本で3番目に古い動物園の「天王寺動物園」の近くにあります。

ある噺家さんは、動物園を教わった時、師匠から「お前、歩き方下手やから天王寺動物園行ってトラにおせて(教えて)もうてこい」と言われたそうですよ。

「わしも人間や」

「ライオンに襲われる!」と驚いた男に、

「わしも人間や」とライオンが言うことで、この噺は終わります。ライオンもトラと同じく、人間が中に入っていたんです。

「ライオンも人間だったのか!」と言う安堵と驚きが笑いに繋がります。

このサゲですが、噺によっては園長がライオンの中に入っている、という設定もあります。

男がトラの歩き方をレクチャーしてくれる園長に「あんたがトラやればいいのに」と言うのは、「ライオンが園長だった」というサゲの伏線でもあります。

『動物園』―小ネタ・豆知識

・日本の動物園の歴史は?

桂文之助がこの噺を作った明治大正時代、まだ日本で動物園は珍しい時代です。

日本で始めて開園した動物園は明治15年上野動物園、2番目は明治36年京都市動物園、3番目は大正3年天王寺動物園です。

桂文之助は後年、京都の寄席で真打ちとして活躍しました。

東山の高台寺に扇子を奉納したり、落語家を引退後は高台寺の境内で「文之助茶屋」を営んだり、京都と縁の深い人物。

高台寺と京都市動物園は歩いて20、30分ほどの距離です。もしかすると文之助も京都市動物園へ行ったことがあるかもしれません。

文之助茶屋は、芸能人プロデュースの店の走りと言われており現在も八坂へ移転し営業を続けています。

わらび餅が有名で、全国各地で行われる百貨店の催事にも出店していますよ。

英語の「Zoo Performer」のあらすじ

仕事がないパントマムの男が、死んでしまったゴリラの代わりに、ゴリラの格好をして檻に入るよう頼まれます。

男がゴリラの格好をして檻の中で寝たり遊んだり好きなことをしているだけで、お客はゴリラに釘づけです。

パントマイムをしていた頃より、注目を浴びることができました。

しかし、だんだんお客もゴリラに飽きるようになり檻の前に集まる人も減ってきました。お客は隣の檻のライオンに集まっていたのです。

男はそれが面白くありません。

隣のライオンをからかったり、ライオンの檻の天井にぶら下がるとライオンは怒り出しましたが、ゴリラとライオンの絡みにお客は大喜び。動物園のスタッフからも喜ばれ、お給料を上げてもらえました。

その日もライオンの檻の天井にぶら下がってライオンをからかっていたところ、手を滑らせた男はライオンの檻に真っ逆さまに落ちていきます。

それを見たライオンはのっしのっしと男に近づいてきます。

絶体絶命!殺される!と思い大声を出そうとした男にライオンはこう言います。

「声を出すんじゃない、2人とも無職になっちまうぞ!」

園長の池田さん

落語家さんによっては動物園の園長を「池田さん」「長谷川さん」「前田さん」と名前で呼ぶこともあります。これはそれぞれ落語家さんの本名で、池田さんは桂 文蝶、長谷川さんは五代目 桂 文枝、前田さんは二代目桂枝雀。
五代目 桂 文枝は今の桂文枝の師匠。「新婚さんいらっしゃい」などで司会をされていた桂三枝の師匠ですね。

『動物園』ー感想
古典っぽくないけど新作でもない不思議さが「動物園」の魅力です。

出てくる言葉も「パン」「アナウンス」「トラ」「ライオン」など江戸時代には馴染みのないものばかり。

お金の単位も「1銭」「1両」ではなく「○万円」が使われます。

江戸の風俗が全く出てこないためアレンジしやすく、落語家さんの演じ方によって全く違う風景が見えてくるのも面白さの1つです。

有名な話ですので聞く機会も多いはず。いろんな落語家さんの「動物園」を聞き比べてみてはいかがでしょうか。

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hujieriko

奈良育ち京都在住の子育てワーカー。現在はスタートアップ企業の採用支援として従事。小3の時、学芸会で「寿限無」を演じてから落語に興味を持つが生で聞く機会はなく、子供向けの落語本を読み漁る。歴史にも興味を持つようになり、小6で山岡荘八や吉川英治を読むようになる。『赤毛のアン』『風と共に去りぬ』『細雪』『源氏物語』など名作と言われる小説も好き。小学生の娘が日本舞踊を習いはじめたため、長唄・日本舞踊・歌舞伎にも興味を持ち始める今日このごろ。