現役書店員の私が選ぶ!2022年の新刊文芸9選!

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現役書店員の私が選ぶ!2022年の新刊文芸9選!

東莉央(書店員)
はじめまして!私は年間500冊ほどを読む書店員です。

今回は話題の新作も多かった2022年の新刊文芸を振り返り、私なりのベスト9を発表します。

小説の力に突き動かされることが好きな同志の皆さん。

そしてその力が気になってきた皆さんへお届けする厳選9選です。

エンタメ小説、純文学、海外翻訳のジャンル別に紹介いたします。

エンタメ小説

1.『汝、星のごとく』凪良ゆうさん著

ジャンル エンタメ、恋愛
出版社 講談社
出版日 2022年8月4日
ページ数 352ページ

紹介

瀬戸内の島で知り合うふたりの子ども。
彼らはその時、まだ大人の力に振り回されるばかりの子どもでした。
櫂と暁海。
ふたりはどのようにして大人になっていくのか。
大切な人に1冊プレゼントして、ぜひ共有して楽しんでいただきたい。第168回直木賞候補作。

東莉央(書店員)

トップバッターは壮大な恋愛小説。

とても長い時間をかけて自分を、互いを理解していくふたりの姿は時にとても傷ましいほどでした。

ふたりの章が交互に重なり、追いかけ合うのはきっとあなたの心の内からの反感と共感。

女性読者の私としては、女性主人公暁海の成長に注目していただきたいです。

櫂さんの後ろに隠れているような控えめな女の子が人目を気にせず信じたものを貫くようになります。

この物語は発売からわずか半年ほどで、一体どれだけの読者を泣かせてきたのでしょう。

2.『マスカレード・ゲーム』東野圭吾さん著

ジャンル エンタメ・ミステリー
出版社 集英社
出版日 2022年4月20日
ページ数 376ページ

紹介

大人気、『マスカレード・ホテル』シリーズ最新刊。
その仮面の下にある顔とは。
ミステリーの名手が描く、一流ホテル舞台の事件です。
またしてもホテル・コルテシア東京を殺人鬼が集います。

東莉央(書店員)
私はこの『マスカレード・ホテル』シリーズが大好きで、シリーズ全て読破しています。

映像化したものは映画ももちろんチェックしました。

どうしてこんなに面白いんだろう。 そう考えた時、ホテルマンと警察官、どちらもプロ意識が非常に高い職種であるからではないかと思いました。

手を組むと決めた後も、互いに譲ることのできないラインが確かにあります。 このシリーズはその妥協線の争いです。

新田さんと山岸さんはシリーズ重ねるごとその譲り合いが上手くなっていくのですが、今作では別の人物が立ちはだかり…。

衝撃の真相は、王道のミステリの斜め上を行きます。

3.『人間みたいに生きている』佐原ひかりさん著

ジャンル エンタメ、マイノリティ
出版社 朝日新聞出版
出版日 2022年9月7日
ページ数 232ページ

紹介

食事の時間が苦痛である。
食べられなくても生きていけるからだが欲しい。
食材を噛み砕き取り入れることに疑問を抱く主人公は、ある日、人間みたいに生きる仲間を見つける。

東莉央(書店員)
多様化がうたわれる時代、衣食住の中で「食」のそれだけが遅れを取っているように思います。

次の多様化は「食」にまつわることなのではないでしょうか。

自分の心を打ち明けること、自分の困難を抱えながら他者のそれをも受け止めること。

どちらも非常に難しいことでありながら、そんな誰か一人と社会とのつながりを考えよう。 それが、駆け出し作家佐原ひかりさんの作品に共通して存在するテーマだと思っています。

自己と他者をどちらも大切にしながら、みんなが1つの社会で仲良くするためには何が必要なのか、考えさせられる作品です。

4.『パンとサーカス』島田雅彦さん著

ジャンル エンタメ、政治
出版社 講談社
出版日 2022年3月24日
ページ数 562ページ

紹介

純文学作家であり、芥川賞選考委員も務める島田雅彦さんがエンタメ小説を書きました。
国民にはパンとサーカス、すなわち飢えのない生活と飽きのこない生活を与えてさえおけば良い。政治の裏側ではこんなスリリングが起きている、かもしれない。
東莉央(書店員)
先述の通り、私は年のほとんどを本を読むことに費やしています。

裏を返すと、世間知らずとも言えるのかもしれません。

創作世界にばかり浸っている間に、私の知らないところではこんな世界が広がっていたのかもしれない。 どこまで現実のものかわからない鋭い危険と失笑を買うジョークに目が離せなくなりました。

国や世界を相手にした大きな大きなエンターテイメント。 未知の世界はたまらなく面白かったです。

純文学

5.『月の三相』石沢麻依さん著

ジャンル 純文学
出版社 講談社
出版日 2022年8月25日
ページ数 240ページ

紹介

舞台は旧東ドイツの小さな街です。
三叉路と蝶をエッセンスに、そこに暮らした人たちの恐怖と祈りを扱う小説。
眠り病へのせめてもの対抗として、面を掘ることを思いついた人々の話は、時代も国境も越えて私たちと繋がっているように思います。

東莉央(書店員)
石沢麻依さんは、とても静かで幻想的な世界を得意とする作家さんです。

アートや歴史が好きな人には是非とも読んでいただきたい、芥川賞受賞後第1作。

歴史に基づくようでいて、とても想像的な伝説を土台とします。 そこに迷い込んだ読者はきっと、夢と現実の狭間でワクワクするでしょう。

いつの時代もどこの国の人も、眠りの中の世界を不思議がり、死後の世界を恐れたのでしょうか。

分断の象徴のような東西に分かれるドイツ舞台に読みながら、そうだとしたら私たちは同じ星の下ひとつ屋根の下に暮らしたもの同士ではないかと心温かくなります。

パイを切り分けるシーンのあえての変換「桜ん坊」が連想させるものと、 面とは形により効能が変わり、上半分なら、下なら、という私の好きな2つの場面にもぜひ注目していただきたいです。

6.『N/A』(エヌエー)年森瑛さん著

ジャンル 純文学
出版社 文藝春秋
出版日 2022年6月22 日
ページ数 120ページ

紹介

文藝春秋さんの新人賞『文學界新人賞』で異例の審査員満場一致受賞を果たし、芥川賞候補にも選出された小説です。
「かけがえのない他人」を求めて血迷う高校生主人公。

この世のどこにも該当なし。
私は既存のどれとも違う。
その心を守り通すために何を見るのでしょうか。

東莉央(書店員)
主人公まどかさんは、自分にとってのN/A(該当なし、の意の略語)をはっきり認知した状態から、周囲の人間をそれぞれの人として認識する方法のようなものを徐々に掴んでいきます。

お友達にとって「こう思われるのは嫌だろうな」と癖のようになんとなく思っていたものが、自分のN/A的感情と同列であると気がついてきます。

最後のシーンでの思いがけない人物との再会。 そこで初めて、ああこの人を誤解していたと気がつく様子なのですが、それは急な変化では決してないように思いました。

ぜひ半ばの友人たちへの気配りと繋げて、捉えてみて欲しいと思います。

7.『遠い指先が触れて』島口大樹さん著

ジャンル 純文学
出版社 講談社
出版日 2022年8月11日
ページ数 168ページ

紹介

人が記憶を探るとき、欲しがり必死に手を伸ばす様も、
またこれを知ってしまって良いのかという少しの怯えも、どちらもまた遠い指先であると思うのです。

相手の手に触れることは相手もまた自分に触れているということ。
相手を見ているということは相手にもまた見られているということ。さらにその瞳に映る自分もが見えるということ。

これに触れてしまって良いのかという戸惑い、
自分の体はどこにあるのかという概念。それらは一般にごろごろと転がっています。

東莉央(書店員)
島口大樹さんは場を見つけてはおすすめしている作家さんであり、またきっとそう遠くないうちに芥川賞を受賞されるだろうと思っています。

遠い指先。 こんなロマンティックな言葉が他にあるでしょうか。

文章に文章を重ねるごと深度を増す知的さが、作中たびたび披露されます。

一度読んだだけではスッと入ってこないものの、一文ごとに意味を考え進んでいくと、その1つの「行い」に対し無数の感情がこもっていることがわかります。

海外翻訳

8.『小さなことばたちの辞書』ピップ・ウィリアムズさん著、最所篤子さん訳

ジャンル 海外翻訳
出版社 小学館
出版日 2022年9月27日
ページ数 528ページ

紹介

小さな頃より辞書をつくる仕事とともに育つ少女。
ことばの魅力に何よりも魅せられて成長する彼女が一体どんな女性になるのかとてもわくわくしながら読みました。
小学館の翻訳小説。戦争と女性を考えるシリーズの第1弾。

東莉央(書店員)
例えばことばの力で社会や世界を変える時、活躍するのはきっと主人公エズメのような人です。

本が好きな人にはきっと伝わることばへの情熱がここにあります。

本の好きな人、本の周りで働く人、 それらがみんなワンチームのように感じられて、なんだかとても嬉しくなりました。

その大きなチームは、言論や表現の自由へ挑戦するサバイーバーです。

わたしも何かの力をここぞというときに発揮するために、ことばを美しいと思う気持ちを持ち続けたいと思います。

9.『向日性植物』李屏瑤さん著、李琴峰さん訳

ジャンル 海外翻訳
出版社 光文社
出版日 2022年7月21日
ページ数 252ページ

紹介

台湾初の同性愛恋愛小説。
台北の女子校にて惹かれ合い、戸惑いながらも交際を始めたふたりの女子高生は、卒業後も様々な仲間をさらに交え、ともに繋がりを大事にしていきます。

作家さんの書き出す世界観に訳者さんの見事な日本語リズムが饗宴。
たまらなく心がじくじくするような恋愛小説です。

東莉央(書店員)
読んでみて、胸キュンシーンも悲しいシーンもたくさん心を動かされました。

しかし、私が一番ショックだったことがあります。 それは、理解を示していたつもりのセクシャルマイノリティを私は何も知らなかったということです。

この本を読んで、否定をしていないだけだったことに気がつき、自分の知っている恋愛と何も変わらないことにハッとしました。

それは、この小説に登場する主要な人物が皆、「女性が恋愛対象な女性」であるためにとても伝わりやすくなっています。

この衝撃を、大恋愛を、ぜひお手に取り胸を打たれてほしいと思います。

以上、2022年の新刊文芸9選を紹介しました。

東莉央(書店員)
これらの本たちは2023年も変わらず魅力的ですので、ぜひお好きなタイミングで開いてみていただけたらと思います!

皆さんの素敵な読書体験への扉となれましたらとても嬉しいです。

ぜひあなたも小説の力に身を委ね、素敵な読書ライフをお過ごしください。

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azuma

関東圏の書店で勤務中。翻訳小説、純文学、5大文芸誌がだいすきです!話題作に負けない、自ら見つけた輝く小説をお勧めすることをモットーに働いています。