BOOKTIMES

本の「どういうこと?」が分かる!BOOKTIMESは、国内外の文学作品についての解説・感想をはじめ、文学関連のトピックを発信するメディアです。文学部出身のライターをメインに、年間100冊以上の読書家から図書館司書まで、本と共に生きているライター陣が作品を解説しています。

『高熱隧道』どこまでがフィクション?吉村昭の筆が捉えた現場のリアル

『高熱隧道』の紹介 『高熱隧道』は、1967(昭和42)年、『新潮』5月号に発表された吉村昭の作品です。 本作は、前年に発表された代表作『戦艦武蔵』に連なる実話に基づいた小説群の系列に位置するもので、徹底した取材をもとに、事実に忠実に従う彼の作風が、いかんなく発揮されています。 本作は記録小説とも評されますが、登場人物は作者の造形によるもので、結末も作家自身の意図が反映されている物語です。 ここでは、『高熱隧道』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『高熱隧道』――あらすじ 1936(昭和11)年8 ...

森鴎外『渋江抽斎』史伝小説第一作目!歴史小説との違いも

『渋江抽斎』の紹介 『渋江抽斎』(※読み:しぶえちゅうさい)は、1916年(大正5年)1月から5月にかけて、『東京日日新聞』『大阪毎日新聞』に連載された森鷗外の長編小説です。 森鷗外は晩年、史伝小説の道に進み、『渋江抽斎』・『井沢蘭軒』(1916年6月連載開始、1917年9月完結)・『北条霞亭』(1917年10月連載開始、1921年完結)は鷗外の史伝三部作と称されています。 ここでは、そんな『渋江抽斎』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『渋江抽斎』-あらすじ 渋江抽斎は、江戸時代後期の医者・考証 ...

岡本かの子『生々流転』蝶子がたどり着いた終着点とは?

『生々流転』紹介 『生々流転』は岡本かの子著の小説で、著者の没後、1939年に『文学界』に遺稿として掲載されました。 本作は、乞食という出自を持つ父とその妾となった母のあいだに生まれた蝶子が、生まれ持った不思議な引力に翻弄されながら、自身の生き方を模索していくさまを描いた長篇小説です。 著者の最晩年に描かれ、作家人生の集大成ともいえる一作となっています。 ここでは、『生々流転』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『生々流転』あらすじ 乞食生まれの父とその妾の母とのあいだに生まれた蝶子は、幼少のころ ...

ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』オーランドーは何者なのか?

『オーランドー』の紹介 『オーランドー』は、1928年にヴァージニア・ウルフによって書かれた小説です。 ウルフは英国モダニズム文学を代表する作家で、『ダロウェイ夫人』『波』『灯台へ』などの作品を書きました。 「意識の流れ」手法を使った文体で有名ですが、近年ではフェミニズム文学作家としての注目も高まっています。 『オーランドー』にも、フェミニズム文学として掘り下げられる要素が盛り込まれています。 ここでは、『オーランドー』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『オーランドー』―あらすじ オーランドーは ...

ジェイムズ・ジョイス『ダブリン市民』15作品全てに共通するテーマとは?

『ダブリン市民』の紹介 『ダブリン市民』は1914年にアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスによって書かれました。 ジェイムズ・ジョイスはマルセル・プルーストやフランツ・カフカと並んで20世紀文学を代表する作家のひとりです。 代表作として、アイルランドの首都ダブリンの一日を書いた長編小説『ユリシーズ』などがあります。 初期短編集である『ダブリン市民』は14編の短編小説と、1編の中編小説から構成されています。 ここでは、『ダブリン市民』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『ダブリン市民』―あらすじ ...

落語『紺屋高尾』あらすじからサゲまで!用語の意味も!

『紺屋高尾』の紹介 廓話の傑作、「紺屋高尾(こうやたかお)」。 職人久三が、吉原遊廓でNo.1の三浦屋の高尾太夫に捧げる正直な純愛の気持ちが、高尾太夫の心を動かすという、逆シンデレラストーリー。 全盛と呼ばれた吉原随一の高尾太夫に一目惚れしてしまった紺屋の職人久三。 一所懸命に働いてなんとかお金を貯めて会いにいくという話です。 もともとは浪曲で大ヒットしていたお話のようで。三遊亭圓生が得意としたといわれています。 七代目立川談志も得意とし、一門がよく演じています。なかでも立川談春の高座は、独自のエピソード ...

太宰治『女の決闘』あらすじ!原作との違いとは?

『女の決闘』紹介 『女の決闘』は太宰治著の小説で、1940年『月刊文章』に掲載されました。 本作は『鴎外全集』に収録された十九世紀、ドイツの作家·ヘルベルト·オイレンベルグの『女の決闘』という短編を、作者(太宰)が作中で注釈を加えつつ改変してゆくという珍しい構成の小説です。 鴎外の訳文がそのまま全文採用され、その途中に太宰の注釈と追加描写が差し込まれています。 ここでは、『女の決闘』のあらすじ·解説·感想までをまとめました。 『女の決闘』あらすじ 鴎外全集を手にした作者(太宰)が、これから十九世紀のドイツ ...

太宰治『桜桃』太宰最後の短編小説

『桜桃』の紹介 『桜桃』は1948年(昭和23年)、太宰治によって執筆された短編小説です。 太宰の忌日である「桜桃忌」は、この作品から着想を得て名付けられました。 ここでは、『桜桃』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『桜桃』のあらすじ 作家の「私」は、妻、七歳の長女、四歳の長男、一歳の次女の5人家族で暮らしている。 「私」は「日々悩み煩うことが多いために、表面では道化を装わざるを得ない」と言う考えから、家にいるときを初め、どのような場面でも冗談を言っている。 長男は発達に遅れが見られ、少しも成長 ...

太宰治『ヴィヨンの妻』戦後に創作された太宰作品

『ヴィヨンの妻』の紹介 『ヴィヨンの妻』は1947年(昭和38年)太宰治によって執筆された短編小説です。 傷つきやすく破滅的な詩人の姿を劇画化し、妻の立場から批判的に描いています。 ここでは『ヴィヨンの妻』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。 『ヴィヨンの妻』あらすじ 私は来年四歳になる息子と貧しい生活を送っていた。夫は常に泥酔をしておりめったに家に帰ってこない。 ある夜、夫が珍しく帰宅する。普段とは異なるように優しい夫を訝しげに見ていると、鋭い声が届く。玄関には男女が憤慨して立っていた。 二人は飲 ...

『愛と死』あらすじ&解説!戦時下の言論統制の中で描かれた作品

『友情』は1939年に『日本評論』に発表され、第2回菊池寛賞を受賞した武者小路実篤の小説です。文芸雑誌『白樺』を創刊し、白樺派を代表する作家として活躍した実篤の代表的な恋愛小説の一つ、『愛と死』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。