海外の翻訳小説、あなたはどれくらい読まれますか?
今回は海外翻訳小説を厳選20選でお届けいたします。どれも海を越えやってきた傑作小説です。ぜひお楽しみください!
世界の児童文学、一般文芸小説の2カテゴリに分けて紹介します。
世界の児童文学
児童文学としてお子様が読めるように書かれています。
もちろん大人になっても楽しめる深みのある名作小説たちです。
1.『ドリトル先生アフリカ行き』ヒュー・ロフティングさん作・絵、井伏鱒二さん訳
ジャンル | ファンタジー小説 |
出版社 | 岩波少年文庫版がおすすめ! |
出版日 | 2000年6月16日 |
ページ数 | 252ページ |
患者さんである動物たちの訴えはどんな小さなものでも、難しいものでも耳を傾けます。
いつでもお金はないけれど、いつでも心は温かい。
素敵な大人の理想像だと私は思います。
実は長編シリーズです。ぜひたくさん読んでみてくださいね。
そして親切な先生と暮らす家族である動物たち。
ドリトル先生のお家には、ワンちゃんも、オウムさんも、豚さんもいるんですよ。 それぞれ個性的で可愛いキャラクターです。
あなたのお気に入りファミリーは誰ですか? 私の推しファミリーはアヒルのダブダブです。
2.『マリゴールドの願いごと』ジェーン・フェリスさん著、ないとうふみこさん・池上小湖さん訳
ジャンル | 恋愛小説 |
出版社 | 小峰書店 |
出版日 | 2014年12月24日 |
ページ数 | 301ページ |
彼は森から見えるお城で暮らすお姫様に夢中です。
ある日勇気を出してお城へお手紙を出してみました。なんと姫、マリゴールドからお返事が届きます。
文通に始まるかわいい恋の物語です。
身分の差をじゅうぶんに感じながらも勇気を持って行動したクリスチャンは立派な若者ですね。
マリゴールドにもきっとその優れた人柄と熱い思いが届きますように。
そう2人を応援しながら読んでみてください。
3.『若草物語』オルコットさん著、麻生久美さん訳
ジャンル | 少女小説 |
出版社 | 光文社古典新訳文庫版がおすすめ! |
出版日 | 2017年10月11日 |
ページ数 | 572ページ |
姉妹喧嘩をしたり、魅力的な男性にキャピっとしたり。いつの時代もガールズトークは楽しいですね。
気がつくと自分も5人目の姉妹の仲間になっていました。
自分は誰に一番似ているかな、と考えてみるのはとても楽しいです。
彼女たちの大人への扉としてどんと構えるのが社交界デビュー。
着飾って舞踏会や夜会に参加する年頃を迎えるのを心待ちにしている様子でした。
現代日本の少女たちにとって、社交界デビューに当たるものとは一体なんなのでしょうか。
4.『高慢と偏見』ジェイン・オースティンさん著、小尾芙佐さん訳
ジャンル | 少女小説、結婚小説 |
出版社 | 光文社古典新訳文庫版がおすすめ!(上・下巻) |
出版日 | 2011年11月10日 |
ページ数 | 359ページ |
一筋縄といかずすれ違い苦しむ様にこちらの心も苦しくなりました。
結婚が目前に迫った少女たち。自分は誰のお嫁さんになるのでしょう。
姉妹の中で毎日のように話題になるのが旦那さん候補の男性たち。
恋心を抱いたり、泣くことになったり。 その心の忙しさは現代も相変わらずです。
5.『モモ』ミヒャエル・エンデさん著、大島かおりさん訳
ジャンル | ファンタジー小説 |
出版社 | 岩波少年文庫版がおすすめ! |
出版日 | 2005年6月16日 |
ページ数 | 410ページ |
豊かな人生とは一体なんなのか。
人としての行き方と、時間の使い方について見直すきっかけとなってくれる1冊です。
お店も仕事も休みになり、時間の過ごし方を問われた時期でした。
時間どろぼうに盗まれた時間を取り戻すモモ。 お花を使って、とてもドラマチックな方法でみんなを助けます。
そのシーンの素敵なことと言ったら、小説の醍醐味そのもののようです。
6.『嘘の木』フランシス・ハーディングさん著、児玉敦子さん訳
ジャンル | ミステリー小説、ファンタジー小説 |
出版社 | 東京創元社 |
出版日 | 2017年10月20日(四六版の翻訳発売日) |
ページ数 | 414ページ |
発見した「嘘の木」の真相とはいかに。
人にもたらした歪みは嘘の存在だけではありませんでした。
コスタ賞、児童書部門でダブル受賞。2022年、日本で待望の文庫化を果たしました。
人間界の根底を突くような長編小説です。 摩訶不思議な「嘘の木」について色々なことを考えました。
嘘をつくという行為が人間にもたらすのはどのような影響なのでしょうか。
嘘はどんどん大きくなります。 欲にまみれて見境無くなる犯罪への道かもしれません。
「嘘の木」がどんなメタファーであるか考えてみるのも楽しいと思います。
7.『ハリー・ポッターと賢者の石』J・K・ローリングさん著、松岡佑子さん訳
ジャンル | ファンタジー小説 |
出版社 | 静山社 |
出版日 | 1999年12月1日(A5版) |
ページ数 | 464ページ(A5版) |
手紙を持ってきた大男は、ハリーが魔法使いだというのです。
「僕はただのハリーだよ」
そう言っていた階段下の男の子が魔法界へ踏み込みました。
2022年、文庫新装版が発売。
本の中に広がるのは、階段も壁画も動く世界。 ホグワーツでの楽しい毎日の始まりです。
シリーズ読み進めるごとに浮き彫りになる真実。
この作品のコアは、ハリーが「許されざる呪文」を使うことなく予言に打ち勝つその部分にあると思います。
一般文芸小説
ここからは主に大人をターゲットに書かれた海外の小説たちです。
そのメッセージの強さをぜひご覧あれ。
1.『花の子ども』オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティルさん著、神崎朗子さん訳
ジャンル | フェミニズム、家族小説 |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2021年4月14日 |
ページ数 | 384ページ |
どんな植物の本にも載っていて、広大で、いかなる種類も咲き誇るバラ園があるといいます。
そこは現在手入れをする人がいなくなってしまい、荒れ果てた状態。
そのバラ園に息を吹き返させようと思い立つ主人公はバラを持って旅に出ます。
知らないうちに父親になっていた戸惑いを抱え、新しい職場へ挑みます。
2つにこの小説のパートを分けるとします。
そのどちらにも共通して色鮮やかなモチーフが2つ登場します。それが赤ちゃんとバラです。
小説でありながら眼に映るような色鮮やかさ。 主人公がバラ園に着く頃にはカラフルさがまさに満開になります。
憧れの仕事に就いた高揚。 新しい生活での慌ただしさ。 皆に好かれるとってもかわいい子ども。
お花畑にまさによく似合う家族が幸せでありますようにと願わずにいられません。
2.『小さなことばたちの辞書』ピップ・ウィリアムズさん著、最所篤子さん訳
ジャンル | フェミニズム、大河小説 |
出版社 | 小学館 |
出版日 | 2022年9月27日 |
ページ数 | 528ページ |
ことばの魅力に何よりも魅せられて成長する彼女が一体どんな女性になるのかとてもわくわくしながら読みました。
大辞典に載らないことばは人々に忘れられてしまいます。
そのことを恐れた彼女はカードを武器に闘うのです。
本が好きな人にはきっと伝わることばへの情熱がここにあります。
本の好きな人、本の周りで働く人、 そのみんながワンチームのように感じられます。
ことばの周りに集う大きなチームは、言論や表現の自由へ挑戦するサバイーバーです。
公式な文書に記録されない身分の人がいると気がついた主人公は、自らことばを集め、小さな辞書を作ります。
3.『向日性植物』李屏瑤さん著、李琴峰さん訳
ジャンル | 恋愛小説、百合、レズビアン小説 |
出版社 | 光文社 |
出版日 | 2022年7月21日 |
ページ数 | 252ページ |
作家さんの書き出す世界観に訳者さんの見事な日本語リズムが饗宴。
ふたりの女性をコアとして進む、たまらなく心がじくじくするような恋愛小説です。
日に向かって伸びる植物。
自分にとってのお日様とは何なのかを考えました。
心や目線といった実在しないものをとても的確に文章にしていると感じました。
この小説に登場する主要な人物は皆、「女性が恋愛対象な女性」です。
その仕掛けにより、否定はしないけれども真に理解していなかった読者へ、等身大の同性愛を届けてくてます。
この衝撃と大恋愛を、ぜひ手に取って胸を打たれて欲しいと思います。
4.『海と山のオムレツ』カルミネ・アバーテさん著 、関口英子さん訳
ジャンル | グルメ、短編集 |
出版社 | 新潮社 |
出版日 | 2020年10月29日 |
ページ数 | 175ページ |
家族で美味しい料理を囲うことは世界共通のよろこびです。
食べたことがない異国のメニューがきっと盛りだくさんの短編集、たくさん想像をして、時に調べて、お楽しみください。
「みんなで食べると美味しいね」 大切なひとと幸せな食事のひとときはたまらなく温かい描写になります。
世界旅行に旅立つようなつもりで異国のレシピを楽しんでください。
5.『マザリング・サンデー』グレアム・スウィフトさん著、真野泰さん訳
ジャンル | 人生大逆転小説、身分差 |
出版社 | 新潮社 |
出版日 | 2018年3月30日 |
ページ数 | 176ページ |
主人公のジェーンはお仕えする家で年中働きます。
ただ1日、マザリング・サンデーを除いて。
メイドに許された休暇の日、帰郷の日に孤児院育ちのジェーンは何を思うのでしょうか。
本書のタイトルにもなっているこの名前からは、メイドにとって家族は大切で、特に母は偉大な存在であると感じさせられるものがあります。
帰る家がないジェーンですが、不幸に嘆いてばかりでなく、自分の人生を勝ち取りに行くのです。
6.『わたしのなかのあなた』ジョディー・ピコーさん著、川副智子さん訳
ジャンル | 家族小説、闘病小説 |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2006年9月1日 |
ページ数 | 630ページ |
アナは白血病の姉の適合ドナーとなるべき生まれたデザイナーベイビーです。
両親が自分に求めるのは、姉に血を、臓器を分けることでした。
アナにだって幸せになってほしい。 わたしも思いましたし、きっと両親も少なからず思っているのでしょう。
けれども自分に愛情を与えられていないように思ったアナは、家族相手に法廷に立ちます。
病は誰のせいでもないのに、ひとつの家族を分断してしまったようでした。
7.『海を照らす光』M.L.ステッドマンさん著、古屋美登里さん訳
ジャンル | 家族小説、恋愛小説 |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2015年1月23日 |
ページ数 | 464ページ |
家族が欲しい。
そんな時に赤子を引き取る機会に恵まれます。
生みの親か育ての親、どちらかを選べと言われたら、複雑な事情を幼子に理解できると思いますか?
上下巻に分かれた文庫版も発売されていますので、ぜひぜひ読んでいただきたいです。
女性の母性と、灯台守の男性の決まりに忠実な姿勢がぶつかります。
小さな愛しい子にお母さんと呼んでもらえるのはただひとりなのです。
せめて元気に、幸せに暮らしてもらえますように。 ラストでその願いが届きます。
8.『最善の人生』イム・ソルアさん著、古川綾子さん訳
ジャンル | 青春小説、友情小説 |
出版社 | 光文社 |
出版日 | 2022年9月22日 |
ページ数 | 192ページ |
仲良しの3人組を引き裂くのもまた残酷な学校社会でした。
成績に家柄、人の上に立つこと。
学生時代にはとても意味があるように思えたことは、たいてい大人になるとちっぽけです。
お国によってティーンの事情はこんなにも異なるのでしょうか。
そんなに簡単に仲違いをしないでほしかった。
それはわたしがもう学生ではないから言えることなのでしょうか。
模索し衝突を繰り返す若者たちの物語です。
9.『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズさん著、友廣純さん訳
ジャンル | 恋愛小説、自然界小説、ミステリー小説 |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2020年3月5日 |
ページ数 | 512ページ |
自然界の美しさを存分に書いた湿地で暮らす少女の物語です。
人よりも植物や動物たちと心通わすカイアはある時、恋に落ちます。
彼らを隔てるものとは一体なんなのでしょう。
何が横たわっているのかと悔しくなってしまいました。
ある男性との出会いには心ときめき、主人公が残した謎を知る時には雷にも打たれる思いです。
孤独な少女のポエムがあなたを脳天から貫きます。
10.『三つ編み』レティシア・コロンバニさん著、齋藤可津子さん訳
ジャンル | フェミニズム小説 |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2019年4月25日 |
ページ数 | 216ページ |
ここからはぜひ一度読んでみてほしい、書店員激推しの2人の作家さんについて2作ずつ紹介します。
理不尽に耐えながら自己実現に向かって突き進みます。
強かで諦めを知らない女性たちの姿は、とてもかっこいいのです。
短編形式ではなく、並行して進んでいきます。
色々な場面で女性が頑張っては苦労しているんだな、ということを教えてくれる小説かと思いきや、びっくりするところで彼女らの人生が交わるのです。
グローバルな視点でフェミニズムを考えるきっかけとなってくれる1冊でしょう。
11.『あなたの教室』レティシア・コロンバニさん著、齋藤可津子さん訳
ジャンル | フェミニズム小説、教育 |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2022年9月14日 |
ページ数 | 179ページ |
教師を退職したフランス人女性、レナはインドで学校を開くことを決意します。
ある少女に命救われたことをきっかけに、異国の文化へ勇敢に立ち向かうのです。
わたしは本を読むことが好きな女ですので、女性が本や学びを求めるなんていけないことだという考えにはショックを受けました。
あまり感じたことがなかった日本の義務教育のありがたさを知りました。
読み書きを習ったおかげでわたしもここに、小説のお勧めを書くことができます。
この小説は歴史の中で確かに起こったこと。 人類の歴史のアーカイブなのだと思います。
12.『クララとお日さま』カズオ・イシグロさん著、土屋政雄さん訳
ジャンル | AI小説、近未来小説 |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2021年3月2日 |
ページ数 | 441ページ |
ある家族の元へ行き、女の子のお世話して、友達になります。
いくつも不思議なことが起こる物語。
ノーベル文学賞作家の描く近未来は、近い将来の私たちの姿かもしれません。
もとは我々が自由になりたくて生んだものたちです。
近いうち追い越されてしまうかもしれない存在。人類はうまく共存していけるのでしょうか。
そして本当の家族や友人のようにあたたかく迎えることができるのでしょうか。
ぬくもりとともにクララに最後に会いに来てくれたのは、意外な人でした。
13.『わたしを離さないで』カズオ・イシグロさん著、土屋政雄さん訳
ジャンル | SF小説、ロマンス |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2006年4月22日 |
ページ数 | 349ページ |
舞台はヘールシャムという寄宿施設。
学校のように集会があり、授業があります。そこは特別な子どもたちが生活する場所でした。
自分らに定められた人生を知った時、キャシーたちはどう咀嚼していくのでしょう。
ヘールシャムは現実にある場所なのか。 本当にこんなことが世の中になっていいのか。
キャシーたちがこんなに懸命に生きているのに、私は何をしているんだろう。
ヘールシャムの子供たちが皆、愛に執着し、恋人や友人と特別密である意味に涙しました。
ここで紹介した作品たちは、文庫版が刊行されているものもたくさんあり、なかには映画化されているものもあります。
ほかのお国の主人公や作家さんが見せてくれる世界もまた刺激的です。
ぜひどこかに入り口を見つけて飛び込んでみていただきたいです。