小説『風が強く吹いている』アニメとの違いからあらすじまで!

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小説『風が強く吹いている』アニメとの違いからあらすじまで!

『風が強く吹いている』についての紹介

『風が強く吹いている』は2006年に新潮社から刊行された本で著者は三浦しをんさん、イラストは山口昇さんです。

このお話は漫画化やラジオドラマ化、舞台化、そしてアニメ化までされ、今でも沢山の人に読まれている超人気作です。

ここからは、そんな『風が強く吹いている』のあらすじや解説、感想、アニメとの違いを語っていきたいと思います。

『風が強く吹いている』のあらすじ

自らの行いが原因で部活動を追い出されたカケルは金もなく途方に暮れ、自らの脚を万引きに生かし逃走していた。

偶然通りかかったハイジはカケルの走りに魅了され、迷わず自転車で追いかける。

そしてハイジはカケルに問う。「走るの好きか?」

その突拍子もない言葉に驚き、脚を止めたカケルを竹青荘に勧誘する。

行く当てもないカケルは承諾し、それぞれが自由気ままに生活する竹青荘に入る。

その後カケルの歓迎会でハイジは「この十人で箱根駅伝を目指す!」と宣言する。

実は竹青荘はハイジが箱根に出場するための「寛政大学 陸上競技部錬成所」だった。

当然住人たちは騙されたと抗議するが、ハイジに心理を握られた(半ば脅された)彼らは箱根を目指すことに同意する。

素人集団だが徐々にそれぞれの長所を伸ばし戦力を高める。

しかしカケルは箱根出場にまだ本気の熱意を持っていなかった。

そんななか記録会で藤岡一真と自分の実力差を目の当たりにし、走ることの厳しさを突きつけられた。

焦ってイライラした様子のカケルにハイジは言う。「きみは記録のためだけに走るのか」

何とか団結力を取り戻したメンバーは無事に予選を突破し箱根駅伝に出場する。

それぞれの想いを乗せて走りぬいた箱根は優勝はできなかったが、東体大に2秒差で勝ち十位以内にランクインしたことで見事シード権を獲得することができた。

感動の嵐のなかハイジはカケルに問う。「頂点が見えたかい?」

『風が強く吹いている』・登場人物

~竹青荘(寛政大学・陸上競技部の寮)の住人達~  ※( )内はあだ名。

  • 清瀬灰二(ハイジ):寛政大学文学部4年生。駅伝チームの主将。第10区走者。誰よりも部員想いな頼れるリーダー。
  • 蔵原走(カケル):社会学部1年。第9区走者。短気で口下手。ある夜、灰二と出会い....。
  • 杉山高志(神童):商学部3年。第5区走者。穏やかで素朴な好青年。地元では往復10kmの山道を学校まで通っていた。
  • 柏崎茜(王子):文学部2年。第1区走者。漫画オタク。端正な顔だが何の役にも立っていない。
  • 城太郎(ジョータ):1年。第3区走者。双子の兄。天真爛漫だが計算高い一面も。弟よりもしっかりしなくてはと思っている。
  • 城次郎(ジョージ):1年。第4区走者。双子の弟。計算の無い天真爛漫な性格。兄と似ていることに不満はないが実は自分自身を見てほしい。
  • 岩倉雪彦(ユキ):法学部4年。第6区走者。秀才で柔軟。司法試験に1発で受かり、タガが外れてクラブに通いだした。
  • ムサ・カマラ(ムサ):理工学部2年。第2区走者。流暢で丁寧な日本語を話す黒人留学生。自分では戦力にならないと訴えるが居心地の良さを感じだし翻意した。
  • 坂口洋平(キング):社会学部4年。第8区走者。クイズ番組好きで、多才な知識を持つ。就職活動に苦戦中。小心者で根暗。
  • 平田彰宏(二コチャン):理工学部3年。第7区走者。2年間浪人して入学、その後単位不足で2年留年。そのためハイジよりも3歳年上。ヘビースモーカー。

~その他~

  • 勝田葉菜子:文学部1年。駅伝部マネージャー。ヒロイン的ポジション。八百屋の娘。黒髪ロングヘアの美人。城兄弟に好意を寄せている。
  • 田崎源一郎:竹青荘の大家。寛政大OB。ハイジによると寛政大の名コーチだった。
  • 榊浩介:東京体育大学1年。第8区走者。カケルと同じ高校の陸上部だった。当時カケルが部内で問題を起こして以来辛くあたり、ライバル視している。
  • 藤岡一真:六道大学陸上ぶ4年。第9区走者。大学長距離のトップ選手。ハイジと同じ高校こ陸上部だった。人格者。陸上においてのカケルのライバル  。

『風が強く吹いている』解説1 ~アニメとの違い~

小説からアニメヘ

アニメでのストーリーや登場人物の性格は本書と多少異なっています。

例えばアニメでのカケルは小説以上に意地っ張りで頑固なところが押し出されていて、

箱根を目指すということをなかなか本気に捉えずハイジに対して反論したりと、カケルが心を開いて同意するまでが長めに描かれています。

ストーリーでは、勝田葉菜子が城兄弟に好意を寄せているという会話が所々出てくるのですが、本書では葉菜子が「同じ顔だからどちらも好き」と言っていますが、アニメでは兄か弟かは明確ではありません。

また葉菜子自身も、本書では黒髪ロングヘアですがアニメでは栗色のショートボブへアというように見た目も大きく異なっています。

原作をリスペクトしつつ、そのつど変化をしていくことで見方も増えて面白いですし、長年人気である理由も分かります。

『風が強く吹いている』解説2 ~アニメと本書~

原作もアニメも知っていると面白さが倍に

先ほどは「二つの違い」を話ししましたが今度は「二つを知っているからこその面白さ」について話します。

アニメを見てから原作を読むと、状況や話し方、会話のテンポ感を知っているので文字を読んだときにも脳内変換がしやすいです。

「この人はどんな声で、どういう感情表現をして」と思い出しながら読み進めることで登場人物たち一人一人の理解度が上がり、さらに世界観に入ることができます。

特にアニメのハイジさんの感情の込め方は、原作のハイジさんの人柄をしっかり捉えている感じがして「声優さんの力」に感心しました。

また原作を読んでからアニメを見るのも、自分の解釈とアニメの解釈を照らし合わすことができるので面白いと思います。

例え解釈が異なっても「そっちがあったか」と新たな発見ができそうですし、自分の解釈を大切にしつつ一つの参考としてアニメを見るのも良いと思います。

そして、原作とアニメだけでなくラジオドラマや舞台もあるので、是非そちらも機会があったらご覧になってみてください。

『風が強く吹いている』感想1 ~本書(原作)の魅力~

作者の伝えたいことが直に分かる

アニメや舞台も躍動感があって良いですが、やはり文字だけに集中できる原作の小説は一番だとおもいます。

文字に神経が集中することで余計な情報が入ってこないので、作者がこの場面で一番強調したいことや伝えたいことが理解しやすいのです。

例えば、ハイジがカケルに、

「長距離選手に対する、一番の褒め言葉がなにかわかるか」
「速い、ですか?」
「いいや。『強い』だよ。」

『風が強く吹いている』

と言う場面。

「強い」とは強靭な肉体のことでも脚力のことでもなく、自己分析をし、他人からの期待や自分自身の焦りに打ち勝ち、何が降りかかろうと決して脚を止めず進み続ける「精神」の強さのことなのです。

私はそれを理解したとき、ハイジの「走る」に対する真摯な考えと作者の人物の魅せ方に凄いなと圧倒されるばかりでした。

痛めた脚が使い物にならなくなって、今後走れなくなったとしてもいいという箱根に対する熱い想いと、揺るぎない覚悟があるハイジが言うからこそ「言葉の重み」が違いますし、とても胸に響きます。

改めてこの作品は文字だから生きるのだなとかんじました。

感想2 ~アニメの魅力~

文字には無い、表情や声から読み取れること

文字が一番だと言いましたが、もちろんアニメにしかない良いところもあります。

文字では想像することの楽しさを感じますが、アニメでは映像と音声から迫力を感じられます。

例えばカケルとハイジの喧嘩の場面⇓

「話しにならない」 走は食卓に拳を叩きつけた。
「きみは記録のためだけに走るのか」
清瀬も、手にしていた紙を荒っぽく食卓に放りなげた。
走を正面から見据えてくる目に、わずかな苛立ちと怒りが宿っていた。

「記録」にこだわりすぎて「走る」意味を見失いかけているカケルに、ハイジはインカレへの出場をやめようと言います。

それに対しカケルは焦っていることを指摘されたように感じ冷静でいられなくなり、このように物にあたっています。

アニメでのこのシーンはカケルの怒りのこもった拳や声の荒げ方から「不器用で口下手なカケル」というのがしっかり伝わってきて、人間として未熟な彼が哀れであり少し可愛くも思えました。

またハイジの静かな怒りには圧倒されました。

カケルのようにただぶつけるのではなく、相手の怒りを受け止めて真正面から「それは間違っている」と冷静に返すハイジですが、その中には少しの「怒り」が混ざっていてハイジらしい静かな「圧」を感じました。

「クールに振る舞う中にも幼さが残るカケル」と「熱意溢れる強引さの中にも大人でいつもどこか冷静なハイジ」という二人の「差」がとてもよく表現されていて、展開にハラハラしつつ声優さんの表現力にトリハダが立ちました。

今回は小説の主人公である清瀬灰二とアニメの主人公である蔵原走にスポットを当ててお話しましたが、竹青荘の住人たちは一人一人のストーリーが深いので正直脇役なんていません。

駅伝のことを何一つ知らなくても全然大丈夫ですし、むしろ知らないからどれも新鮮に感じ楽しめると思います。

涙なしでは見られない彼らの熱い想いと生きざまを是非感じてください。

以上『風が強く吹いている』の紹介でした。

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いい肉野菜

読書歴10年。本に対する自分の「好き」を伝えたいと思いライターを始めました。小説や漫画、作家やジャンルに関係なく何でも読みます。趣味は読書や音楽鑑賞、歌うことです。特技は家事全般で、特に掃除が好きです。作業のときに流す音楽はアニソン、K-POP、フリーBGMです。