『はらぺこあおむし』について
小さなお子さん向けの絵本の定番といえば、『はらぺこあおむし』ですよね。
アメリカで1968年に出版され、1976年には日本語に翻訳されました。半世紀ちかくにわたり、世界中の子どもたちに愛されている絵本です。
作者はエリック・カール。もともとはグラフィックデザイナーでしたが、1967年に『くまさん くまさん なにみてるの?』で絵本作家デビューを果たしました。
ちなみに、訳者のもりひさしは『しろくまちゃんのほっとけーき』をはじめとする「こくまちゃん」シリーズの作者の一人なんですよ。
『はらぺこあおむし』のあらすじ
日曜日の朝、ちっちゃなたまごから、ちっぽけなあおむしが生まれました。
おなかが空いたあおむしは、食べるものを探しに出かけます。
月曜日、あおむしはリンゴを1つ食べました。
火曜日にはナシを2つ、水曜日にはスモモを3つ…。
満ち足りたあおむしはサナギになって何日も眠り、やがて美しいちょうになりました。
『はらぺこあおむし』の基本情報
・0歳児にも◎破れにくく汚れにくい「ボードブック版」
・サイズ違いの「ミニ版/ビッグブック版」
・英語と日本語が併記された『英語でもよめる はらぺこあおむし』
・おどろきいっぱいのしかけ絵本『とびだす はらぺこあおむし』
・好きな色に塗れる『〈ぬりえ絵本〉わたしだけのはらぺこあおむし』
など
『はらぺこあおむし』の感想
《子どもの感想》
①ちょうちょになるのがおもしろい
0歳から『はらぺこあおむし』に親しんできた娘は、幼稚園児になっても『はらぺこあおむし』が大好きです。
とくにラストシーンがお気に入りで、ちょうのページを開いたまま絵本にぬいぐるみを乗せて「ぬいぐるみさんに羽根がはえちゃった~」と楽しんでいます。
自分の背中にあてて、羽ばたく真似をしながら走り回ることも。
②おうたがあるのがおもしろい
『はらぺこあおむし』には、絵本をもとにした歌があります。
娘はこの歌が大好きで、自分で絵本を読むときに歌うようになりました。
気になる方は、Webで動画を探すか、CD付きの絵本を買ってみてくださいね。
Web上には、エリック・カールみずから英語で読み聞かせをしている動画もありますよ。
③たくさんかきたくなる
絵を描く楽しさに目覚めた娘が量産しているのが、『はらぺこあおむし』のイラストです。
あおむしが笑ったり泣いたり、ときには目をハートにしたり。
『はらぺこあおむし』はシンプルなので、小さな子でも真似して描きたくなるようです。
折り紙を丸く切って重ねて貼り、あおむしの飾りを作ることも。
《大人の感想》
①ボードブック版は破れない&持ち運びラクラク
わたしが持っているのは、ボードブック版『はらぺこあおむし』。
0歳だった娘に読み聞かせたくて購入しました。
『はらぺこあおむし』は色鮮やかなので対象年齢以下の赤ちゃんでも楽しめますが、なんでも口にいれる時期は、すぐに絵本がヨレヨレになりますよね。
ボードブック版はしっかりとした厚紙でできているので、かじられても破れません。
しかけ部分の小さな穴も、しっかりとした作りになっています。
縦13cm×横18cmほどなので、荷物が多い赤ちゃん期のお出かけにもおすすめです。
②お父さんの読み聞かせにも
『はらぺこあおむし』の登場人物は、あおむしとお月さまだけ。
プリンセスや妖精がでてくる絵本が照れくさいお父さんでも、照れずに読み聞かせできます。
キャラクターのセリフもほとんどないので、気負わずに読めますよ。
③あおむしの成長に子どもの成長を重ねて
ちいさなたまごだったあおむしが、おいしい物をたくさん食べて太っちょになり、すこし眠ってから美しいちょうとして飛び立つ。
子どもと大人の姿が明確に違うちょうは、「大人になること」を思い描くのにピッタリの生き物です。
たくさん食べて大きくなるあおむしの姿に、わが子の成長を重ねる方も多いのではないでしょうか。
読み聞かせは、子どもに愛情を伝える手段の1つです。
わたしが『はらぺこあおむし』を読むことによって、『はらぺこあおむし』が食べ物をどんどん食べるように、子どもが愛情をたくさん吸収してくれるといいなと思います。
『はらぺこあおむし』豆ちしき
①絵がほっこりと温かいのはなぜ?
エリック・カールは絵本を作るとき、紙に絵を描いたわけではありません。
白い薄紙に手や筆で色を塗り、その紙をちぎって貼る、コラージュの手法を用いました。
『はらぺこあおむし』をはじめ、エリック・カールの絵本には独特の温かみがあります。
鮮やかな色彩やかわいらしいキャラクター造形はもちろんのこと、手指を使うコラージュの手法も温かみを生み出しているのかもしれません。
②『はらぺこあおむし』は男の子?女の子?
ストーリーには関係のないことですが、『はらぺこあおむし』は男の子だと思いますか?女の子だと思いますか?
『The Very Hungry Caterpillar』では、主語が「He」になっています。
また、『はらぺこあおむし』は当初『むしのウィリィのいっしゅうかん』というタイトルだったのだそうです。
そのため、男の子の可能性が高いといえます。
③幻の『はらぺこあおむし』
『はらぺこあおむし』は、1985年に大幅に書き直されています。
40年ちかく前のことなので、現在見かける『はらぺこあおむし』のほとんどは修正後のものです。
修正前と後でシーンの加除があるので、修正前のものを見つけたときは、ぜひ比べてみてくださいね。
④はらぺこあおむしは繭からでてくる?
日本語版では「サナギ」となっている茶色のかたまり。本当は「繭」なのだそうです。
たしかに、英語版では「Chrysalis(サナギ)」ではなく「cocoon(繭)」になっています。
これは、あおむしがアイスクリームなどを食べる特殊な虫であることや、エリック・カールのお父さんの言葉「エリック、繭をやぶってでておいで」(周りに心を開いて、の意)に由来するのだとか。
『はらぺこあおむし』の次はこの絵本!
エリック・カールのほかの作品が気になる方に、おすすめの絵本を紹介します。
・遊べる絵本
→『はらぺこあおむし』を含む「Very」シリーズ
- 『くもさん おへんじ どうしたの?』(The Very Busy Spider)
- 『だんまりこおろぎ』(The Very Quiet Cricket)
- 『さびしがりやのほたる 』(The Very Lonely Firefly)
- 『パッチン!とんでコメツキくん』(The Very Clumsy Click Beetle)
・小さな子も楽しめるしかけ絵本
- 『パパ、お月さまとって!』
- 『巨人(ジャイアント)にきをつけろ!』
・曜日や数を学べる絵本
- 『月ようびはなにたべる?』
- 『1、2、3どうぶつえんへ』
・芸術を楽しむ絵本
- 『うたがみえるきこえるよ』
- 『おほしさまかいて!』
- 『えをかくかくかく』
以上、『はらぺこあおむし』のあらすじ&作品紹介でした。
参考文献
・偕成社HP(はらぺこあおむし | 偕成社 | 児童書出版社 (kaiseisha.co.jp))
・PLAY!MUSEUM開館記念展図録『エリック・カール 遊ぶための本』,2020